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2019年度 二月合宿(南岳 横尾尾根)

期 間:2月15日~2月23日 

場 所:南岳 横尾尾根 

参加者:CL 小菅悠人(3年) 

2年 鎌田諒 齊藤孝太郎 鈴木真太朗 丸山瑞貴 

1年 石井壱征 小松大貴 橋本哲 

ОB 淀川裕司 

 

2月15日 晴 

大正池(6:30)~上高地(7:15)~明神(8:25)~徳沢(9:40)~横尾(11:15)

14日の昼に高速バスで新宿から松本まで行き、松本から中の湯までもバスを使用した。中の湯のバス停からラテルネを装着し、釜トンネルを抜け、上高地トンネル入り口に着替えやごみをデポした。今年は暖冬であるためかトンネル内は凍っておらず歩きやすい。しばらく進み、大正池ホテルの駐車場の雪の上で幕営した。翌15日、テントを撤収し、出発する。大正池から横尾まではトレースがあり歩きやすい。重荷に耐えながら皆、黙々と歩く。荷物は重い者で50kgだったがバテて遅れる者はいなかった。横尾にて幕営した。テントを設営後、小菅、鎌田、鈴木、丸山で横尾尾根の取り付きとなるP0・1のコルの偵察に行く。その後、17日に逆歩荷する装備・食糧を横尾避難小屋にデポした。

 

2月16日 雨 5℃

横尾(6:45)~1800m地点(8:30)~P1(10:25)~C1(12:00) 

横尾大橋を渡り、トレースに従いしばらく進むと右になだらかな斜面が現れ、よくみるとコルが見える。ここを登るとP0・1のコルへと到着する。P0・P1のコルでワカンを装着して、P1への樹林帯を登って行く。途中ハイマツが生い茂る箇所があったためここを右に巻いた。P1への登りは急傾斜、緩傾斜が交互に出てくるため現在地を特定しやすい。尾根は明瞭であり、迷う事はなさそうである。しかし、雨が降っていたため、雪質が悪く雪を踏み抜いて体力を消耗する。交代しながらラッセルをしつつ、所々でテープを付けながら登る。荷物を背負いつつも着実に登り、P1に着く。P1からは緩やかなアップダウンを繰り返し、P2手前の台地に到着する。ここで整地を行いC1を幕営した。この日の17時前に淀川OBが入山された。

 

2月17日 晴のち雪 -3℃

<ルート工作隊>鎌田、鈴木、丸山、橋本、淀川OB

C1(6:40)~P2(7:10)~P3(10:10)~P3・P4のコル(12:00)~C1(14:30)

ルート工作隊はヘルメット、ハーネスを着けてC1を出発する。20分足らずでP2に到着する。P2・P3のコルへ急斜面を下り、コルから正面の木々混じりの雪壁を登る(①)。続けて先程より少し緩やかになった急斜面を通過する(②)。しばらく進むと急登から連続して2mほどの垂壁が現れる(③)。垂壁を乗越すと、リッジの急登(④)が現れるが、これを通過するとP3までは単調な登りとなる。P3からは進行方向を西に変えて降りていき、視界不良時には迷いやすくなると判断して蛍光テープを多めにつけていく。また、P3から対面のピークまでは予想以上に落ち込んでいるように見える。下っていくとすぐに尾根が収縮し、リッジに変化する(⑤)。20m程進むとリッジが切れ落ちたため懸垂で痩せ尾根に降りる(⑥)。ここから先は3つほどの小ピークが連続した、水平状のリッジが50m程続く(⑦)。ひとつ目の小ピークを右からトラバースし左側に乗越す。次のピークはリッジの中央を進む。一段降り2m程の垂壁を登り返しそのまま雪稜を登る。雪稜の中央でFixバーを埋め、これを支点とし、そのままP3・P4のコルヘ降りる懸垂に使用した(⑧)。懸垂地点から少し降るとP3・P4のコルに着く。リッジ状のコルから先は樹木や根が張り出している雪壁を登る(⑨)。50m登り切ると尾根上に出る。登り切った地点から痩せ尾根の急斜面にFixを張り終えると(⑩)、今回持ってきた11本のFixを全て使い果たしていた。時刻は13:00近くになっていたため、P3・P4のコルに捨て縄や不要な金物などをデポしてC1に帰幕した。

    P2・P3のコル正面の雪壁 50m

    連続して急登に50m

    リッジからの2m垂壁 50m

    垂壁後すぐの急登 50m

    P3からコルへのリッジ状 20m

    リッジから続く懸垂 50m

    水平状のリッジ50m

    P3・P4のコルへと懸垂 50m

    P3・P4のコルからの雪壁 50m

    雪壁後の痩せ尾根の急登 50m

 

<逆ボッカ隊>小菅、齊藤、小松、石井

C1(6:40)~横尾(8:40)~P1(11:30)~C1(12:30) 

横尾に向けて逆ボッカに行く。凍結していると考え、アイゼンを履いて出発するも、少し進むと雪が締っておらず歩きにくい為、ワカンに装着しなおす。前日に付けたテープの位置などを修正しながら降りる。横尾に着いた後、荷物の振り分けとパッキングをして休憩を挟み、C1に向けて出発する。重荷であったため、トレースはしっかりしていたものの、ペースが落ちる。それでも黙々と登っていき、C1に到着する。その後、荷物整理し、お茶を作りルート工作隊を待った。

 

2月18日 雪 -5℃

C1(6:00)~P3(7:30)~P3・4のコル(8:10)~AC付近(12:00)~C1(14:00)

先発隊(小菅、鎌田、丸山、橋本)と後発隊(齊藤、鈴木、石井、小松、淀川OB)に分かれてACに荷上げをする。先発隊は前日に張ったFixを速やかに通過し、P4手前の痩せ尾根の急斜面以降のFixを張りながらACを目指す。P4手前の小ピークに向けては急登となり、ここでFixを連続して2P張った(①)。横殴りの吹雪が吹き付け、止まっているとかなり寒い。小ピークを過ぎるとリッジとなり、ここに10mと、その後の急登に50mのFixを連続して2P張った(②)。小ピーク頂上の雪稜からコルへ下る急斜面へ60mのFixを1P張り、コルから少し登り返した所で短めのFixを連結して木に固定した(③)。その後、コルから登り返した先は広い尾根となっており、少し進んだ先に再びコルが現れる。その先の少し登り返した樹林帯をデポ地とし、食糧や燃料、余分な登攀具等をデポした。デポをし終えた者から帰幕を開始し、C1に到着したものから順次ペグの掘り返し作業を行い、明日の素早い撤収に備えた。

    P4手前の小ピークへの急登 50m×2P

    リッジに10m、登り50m 2P

    小ピーク頂上の雪稜からからコルへ下る急斜面 60m

 

2月19日 晴 -11℃ (ルート工作前5℃) 

<先発隊> C1(6:30)~AC(8:50)

<後発隊> C1(7:00)~P3・4のコル(9:00)~AC(11:15)

前日とは打って変わって雲一つない晴天である。ACに移動する。ACまでのルート工作や、先に幕営地を決定するための先発隊(小菅、鎌田、丸山、橋本)と、余っているFixロープが5本しかなかったので、セットが容易なところのロープを回収するための後発隊(齊藤、鈴木、石井、小松、淀川OB)とに分けて出発する。すでにルート工作がしてあるので順調に進む。先発隊はACに到着後、整地などを済ませる。後発隊はロープを回収しながら進むため時間がかかる。P3への登りの岩壁の1ピッチ(①)とP3・4のコルからの木々混じりの雪壁(②)の計3ピッチ回収した。後発隊が到着した時にはすぐにテントを立てられる状態であった。

①P3へ向かう途中の大岩1Pを回収

②P3・4のコルから登りの2Pを回収

 

<ルート工作隊>小菅、齊藤、丸山、淀川OB

AC(12:00)~横尾の歯(13:00)~AC(16:50)

ACを設営した後、天気も良く、時間もある為、翌日の行程を前倒ししてアタックのルート工作を行う。P5まで順調に進む。P5から広尾根になり木々が少なくなり森林限界を迎える。このあたりから齊藤は遅れ始めた。P6から顕著な雪庇が出始め、注意しながら歩く。小ピークのナイフリッジが見え始めここからが核心の横尾の歯となる。横尾の歯の取り付き手前で槍沢側が少し急峻であったため50mのFixを張った。横尾の歯は小菅がリードし、セカンドは淀川OBで進んだ。齊藤と丸山は横尾の歯の取り付きで待機していた。

1ピッチ目 ハイマツで始点を取りナイフリッジの岩稜の槍沢側は雪庇が出ており危険であるため横尾本谷側をトラバースする形で進んでいく。最初の中間支点は細い木に、次の中間支点は岩にナッツと残置のリングボルトでとる。その後、横尾本谷側がかなり急になっている雪稜を5mほどトラバースし、小ピークに向けて少し登りかけた所のハイマツで支点を取り、50mのピッチを切る。(①)

2ピッチ目 小ピークに向けて登っていく。小ピークの頂上に着くと右に下っていく。小ピークから右に下っていくナイフリッジは雪に覆われている。特に小ピークでは雪を削るも支点となるハイマツはなかった。1995年の記録で形容していたように、まさにゴジラの背のようである。小ピークから狭い稜上を忠実に下っていきながら槍沢側に移動しコルでピッチを切る。途中ハイマツで中間支点を作成した。(②)

横尾の歯のピッチに連続する形で雪稜に1ピッチ張る(③)。支点は岩で取る。そこを超えた後、淀川OBはP7へ進んでいき、丸山は横尾の歯の中間支点を捨て縄に変えながら進んでいき、齊藤はFixロープ2本を持って横尾の歯を進んでいく。3本目のFixを張った終点の岩にFixロープ、登攀具を残置し帰幕する。

①横尾の歯

②横尾の歯

③その後の雪稜40m

 

2月20日 曇 -9℃

<アタック隊>小菅、丸山、鈴木、小松、淀川OB

AC(5:00)~横尾の歯取り付き(6:00)~天狗のコル(8:00)~

主稜線合流地点(9:30)~南岳頂上(10:20)~主稜線合流地点(13:00)

~横尾の歯取り付き(16:00)~AC(17:00)

前日に淀川OBと話し合い、安全面を考慮し、アタックは二隊に分けて、2日に分けて行うこととした。アタック第一隊はまだ暗く星が出ている中でACを出発した。横尾の歯に着くまでに丸山のアイゼンが3回も外れ、スリングで上から固定した。横尾の歯からその後のP7までは前日にルート工作をしてあったのでスムーズに進む。このあとは自分たちでトレースをつける。P7直後の下りでFixを淀川OBと小菅が50m固定(②)し、他の学生はフリクションノットで降りる。P7・8コルへの下りで100m固定し、懸垂する(③)。少し歩きその後のP8への登りは小菅と淀川OBでロープを出し(④)アッセンダーで登る。P8から天狗のコルまでは不安なところは小菅と淀川OBでロープを出しつつ通過した。そこからしばらくは雪稜を歩く。すると傾斜が急になってくるので、雪崩を警戒して適宜ロープを出して主稜線まで登る(⑤)。主稜線合流地点から南岳頂上までは距離にして500mだが、表面は全面結氷しておりアイゼンも先の方しか刺さらず非常に危険だった。途中アイスハンマーをだしダブルアックスで進む。頂上についてからは記念撮影をし、10分休憩してACに向かいはじめる。帰りの主稜線は横尾尾根との合流地点まで全てロープを張った(⑥)。その後は、急な下りはロープを出して懸垂し、天狗のコルまでコンテニュアスをして下る(⑤)。適宜ロープを出しつつ横尾の歯まで向かい、横尾の歯通過後はACに安全に下った。淀川OBが帰りに1ピッチ張っていた(①)。主稜線の通過で時間がかかり長時間行動となった一日だった。

①横尾の歯直前の下りFix50m固定

②P7直後の下り 50m固定

③p7・8のコルへの下り100m固定 大岩は右から巻いた。

④P8への登り 50m

⑤天狗のコル~主稜線合流地点間は行きも帰りも適宜ロープを出す。

⑥主稜線 100m×5    

           

2月21日 快晴 -11℃

AC(5:00)~横尾の歯(5:50)~天狗のコル(7:30)

                    ~主稜線上(8:30)~天狗のコル(9:30)~AC(13:30)

前日と同様に朝食を1時間早め、ラテルネをつけACを5時に出発する。テントを出ると星空が広がっており、昨日のアタック隊のトレースが残っていて快調に進む。P5直後のトラバースもクラストしておりアイゼンが良く効く。次第に日が昇り始め、横尾の歯に到着する。3つの連続する小ピークのアップタウンを乗り越え順調に通過する。横尾の歯を通過した下りのリッジにFixを1P付け足す。時折吹く風は横尾本谷からで槍沢に雪庇が出来ており、横尾の歯から天狗のコルまではリッジが続いていた。P7の登りは雪壁となっており、かなりの急登である。これを30m程登った。P7直後の急斜面と、一段登り返した小ピークから若干槍沢側に大岩を巻く箇所に50mを合計2P張っており、問題なく通過する事ができた。P7・P8のコルからはP8の登りでFix通過した。P8からは直後の小ピークを通過すると天狗のコルにつく。天狗のコルから先は雪崩対策と訓練の意味を込めて2人1組のコンテニュアンスで進むことにした。序盤は広尾根が続き直ぐにリッジに変化する。リッジの区間で急登が2箇所程あるが、これを慎重に通過する。最後に7m程の雪壁を登りきると主稜線上に上がる。風は飛騨側から吹いており横尾に向かって雪庇が発達している。主稜線上はやはり風が強く、体が直ぐに冷える。南岳までのクラスト具合を考慮すると危険度が高いためここで引き返すことにした。天狗のコルまではコンテニュアンスで降りる。途中の急斜面では後者がビレイしながら降りた。天狗のコルからは先発隊と後続隊に分かれ、後続隊がロープ回収しながら進んだ。横尾の歯までは順調に進んだが、横尾の歯のFix回収ではアップダウンがありロープを屈曲するため少々時間を費やしてしまった。後続隊は先発隊に30分ほど遅れて14時頃に帰幕した。ACでは昨日アタックした部員たちが温かい紅茶を準備して出迎えてくれた。

 

2月22日 雪のち霙 -5℃

AC(6:40)~C1(11:00)~横尾(14:00)

テントを回収し、先発隊(淀川OB・齊藤・鈴木・石井・小松)と後発隊(小菅・鎌田・丸山・橋本)の二隊に分かれて行動し、先発隊はFix工作、後発隊はFix回収を行いP2を目指す。当初の予定ではC1にて幕営予定であったが、時間と体力に余裕があったので横尾に幕営することにした。C1で長めの休憩を取り、横尾を目指す。C1~横尾間では積雪が40㎝程増えておりトレースは消えていた。テープを頼りに下るが、なかなか見つけられない場所がありタイムロスしてしまった。テープのつけ方の重要性を身を持って体感した。C1付近では吹雪であったが、横尾尾根取り付き付近まで下ると雨が中心のみぞれとなった。皆再び濡れてしまった。もう雨はうんざりである。横尾で大急ぎで幕営して、その後、淀川OBを交えての反省会を行った。

 

2月23日 雪 -6℃

横尾(6:00)~徳沢(7:30)~明神(8:40)~上高地(10:00)~中の湯(11:25)

夜から30㎝の積雪があり、横尾から上高地までのお馴染みの道のトレースは埋まっていた。少々のトレースがあり思うように飛ばせない。中の湯11:20発のバスを目指して全力で突き進む。上高地まで来ると多くの登山者がいて、2月の厳冬期のましてや吹雪の中でこれほど多くの人がやってくることに驚かされた。明神から中の湯までは、河童橋で記念撮影をしただけで休憩は取らずに歩き続けた。中の湯に到着した時点で、バスの時間が過ぎていたが幸運にもこの日は悪天候の為バスが遅れていたので、無事にお目当てのバスに乗ることが出来た。これは合宿を乗り切ったご褒美だと皆で喜びを分かち合った。


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東京農業大学 常盤松会館本館3F 農友会山岳部