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2022年度 冬山合宿(槍ヶ岳 中崎尾根)

期 間:2022年12月27日~2023年1月4日

場 所:槍ヶ岳 中崎尾根

 

 

行動概要:12月26日 離京 新宿~松本~新島々駅~新穂高温泉~C1(1130m)

     12月27日 入山 C1~1550m付近デポ地~C1

     12月28日 C1~1700m付近(C2)~1550m付近デポ地~C2

     12月29日 C2~中崎山~1942mデポ地~C2

     12月30日 C2~2100m付近(C3)~1942mデポ地~C3

     12月31日 C3~奥丸山~2320m付近デポ地~千丈沢乗越~C3

      1月 1日 C3~奥丸山~2320m付近デポ地~2350m付近(AC)

      1月 2日 停滞

      1月 3日 AC~千丈沢乗越~槍ヶ岳~千丈沢乗越~AC

      1月 4日 AC~奥丸山~C3~中崎山~C2~C1~新穂高温泉 下山

 

12月26日 雪

 バスタ新宿から松本へ高速バスで移動し、電車で新島々へ移動した。新島々から新穂高温泉へはタクシーで移動した。着いた頃には午前0時を過ぎていた。林道を少し登ったⅭ1予定地(1150m)にテントを立てようとしたところ、すぐに膝上ラッセルになったため、雨具上下とスパッツをつけ、1110m付近にて整地する。立て終えると急いで就寝し明日の行動に備えた。

 

 

12月27日 晴

1110m(C1)(6:30)〜1450m(8:35)〜1550m付近デポ地(11:35)〜C1(13:30)

前日は夜中に到着し寝不足であったため、荷上げの重量を例年より軽くし、ワカンを装着して出発した。積雪は前日同様、膝上あたりまであった。林道を進んで行くと右手に急登のひらけた樹林帯が見え、そこを登っていく。登山道のテープを右手に見ながら急登をラッセルしていく。しばらく進むと少し勾配は緩むが、すぐにまた急登となる。1450m付近からは藪漕ぎが激しくなり、岩も露出してくる。踏み抜きにより苦戦を強いられた。藪漕ぎをしながら懸命に登っていくと、1550m付近の登山道のテープのある地点に着いた。C2までの距離と時間を鑑み、この地点でデポすることとして帰幕を開始した。帰りはテープをつけながらトレースを辿って行きC1へと帰幕した。この晩に温度計が破損したため気温の記録が取れていない。

 

12月28日 曇後晴 

 C1(6:40)~1430m(7:55)~1550m付近デポ地(9:20)~C2(15:00)~1150m付近デポ地(15:40)~C2(16:50)

 撤収を済ませ、ワカンを装着して出発する。夜間には雪も降らず、荷物は重いが前日のトレースは締まっていて歩きやすい。順調に進み、すぐに前日のデポ地に到着した。ここからは膝上ラッセルをしながら中崎の鼻付近で藪と踏み抜きに苦戦しつつ通過する。途中、社会人のパーティも合流し交代でラッセルをしていく。中崎の鼻を通過した1620m付近で岩附OBと合流した。地形図とコンパスで尾根の方角を確認しながら進んでいく。しばらくすると中崎山手前1700m付近で幕営適地を見つけ、行動時間を考慮しここをC2とした。全員で整地・幕営後、神山と鈴木を残し、石井・福島・岩附OBで逆歩荷に戻った。テープを付けながら下り、速やかにデポを回収してC2へ戻った。重荷での長時間行動によって疲れ切った体に紅茶が染み渡った。

 

12月29日 曇

 C2(6:20)~中崎山(6:50)~1816m(10:30)~1942mデポ地(13:00)~C2(15:20)

今にも雪が降りだしそうなどんよりとした空の中、ワカンを装着し出発する。前日から合流した社会人山岳会2名も我々のC2近くに幕営していたため、すぐに膝から腰ほどのラッセルとなる。中崎山付近で社会人山岳会2名と合流し、ラッセルを交代しながら進んでいく。尾根が広いため左俣谷側に切れ落ちているのを確認しながら慎重に進んでいく。ラッセルで思うように進まず、2100m手前の1942mのピークで荷物をデポすることにした。危険個所やクラスト斜面は見られなかったことから、個人装備のハーネス一式、ヘルメット、アイゼンなどもデポした。デポした後、休憩を挟みC2へ帰幕を開始する。蛍光テープを付けながら下っていくが、蛍光テープの本数が少ないため岩附OBと石井で付けながら下り、他の部員はトレースを頼りに先に進んだ。1816m付近で石井の蛍光テープもなくなったため、岩附OBが蛍光テープを付けながら下った。石井はすぐに他の部員と合流し、C2へ帰幕してこの日の行動を終了した。

 

12月30日 雪後晴

 Ⅽ2(6:30)~1816m(7:40)~1942mデポ地(8:35)~C3(10:10)~1942mデポ地(11:30)~C3(12:30)

ワカンを付けて出発する。トレースは雪が軽くかかったぐらいでほとんど残っていたため、スムーズに進む。1942mデポ地点で、昨日デポした個人装備のみ回収しⅭ3を目指す。社会人山岳会の方のトレースが残っていたため、急登だったがスムーズに進んだ。2020m付近の岩壁は登らず、右俣谷側から巻くことができたが、巻き道は急な斜面であるため雪が豊富でないと危険であると感じた。急登を登り切った2100m付近で山岳会の方に追いつき挨拶をする。少しずつ晴れ間が見え始めていた。予定通り2100m付近は幕営に適していたため、すぐに全員で整地・幕営し、C3とした。その後、石井・福島・岩附OBで1942mデポ地へ逆歩荷に向かった。下りではテープを付けながら下り、速やかにデポを回収した後、競うようにC3への急登を登り返した。時間も燃料も余っていたため、ラジウスパーティーをして濡れた衣服を乾かした。

 

12月31日 晴

 C3(6:30)〜奥丸山(7:50)〜2320m付近デポ地(8:30)〜千丈沢乗越(12:45)〜2320m付近デポ地(13:40)〜C3(15:30)

この日は夜間から目を疑うほどの快晴であった。荷上げの荷物をパッキングし速やかに体操を済ませ、ワカン・ハーネスを着け出発する。前日に先に進んだ社会人山岳会のトレースがはっきりと残っていて歩きやすい。順調に進み、2355mのピークに到着する。ピークからの下りは急であるが雪が柔らかいためロープは出さず進む。目の前には奥丸山とのコルと急な登り返しが現れる。コルからの登り返しは元々Fixを張る予定のある場所であったため上級生が様子を見るために先行して登った。登りでは問題ないが重荷を背負った下りでは危険であると判断し、下りで工作することを前提に、Fixロープを残置して先へと進んだ。奥丸山を登りきり、トレース沿いの新雪を踏んで下っていく。槍平からの登山道の合流地点からは快晴のためか多数の登山者が入っておりトレースが踏み固められていた。そのため想定以上の速さで進んだ。2320m地点を幕営適地と判断し荷物をデポした。想定より早く進み、快晴であったため、ワカンをデポし、アイゼンをつけて可能な限りルート工作を行うこととした。デポ地から踏み固められたアップダウンのあるトレースを進んで行く。2400m付近のナイフリッジでは、トレースは飛騨沢側に巻いていたが、練習も兼ねて1PFixを張ることとした。リードは石井が行い、最後に福島が支点を捨て縄に変えて行った。岩附OBと鈴木はトレースを使い先に進んだ。Fix通過後、急登を登って行く。目の前にハイマツ交じりの雪壁が現れ、整地して3P連続でFix工作を行った。なお、2P目より黒色の残置Fixがあった。また、トレースは飛騨沢側に大きくトラバースして夏道と合流していた。

1P:ハイマツ交じりの雪壁50m 鈴木リード

支点・終了点はハイマツを掘り起こして取った。雪は新雪に近く、ラッセルのような形になった。

2P:ハイマツと小石交じりの雪壁50m 鈴木リード

 岩に挟まれた小ルンゼを登る。支点はハイマツだが非常に心細く、まとめて取った。ハイマツの生えていない場所は脆い岩壁となっているため、細かな落石には注意したい。終了点はナイフリッジ手前でしっかりとしたハイマツを掘り起こして取った。なお、終了点からはうっすらトレースが残っていた。

3P:ナイフリッジ50m 石井リード

 高度感はあるが雪が深く恐怖は少ない。掘り起こすハイマツはしっかりとしており、支点・終了点ともにハイマツで取った。

その先は再び岩壁が現れ、トレースはその岩壁の小ルンゼの雪を詰めていたが、槍ヶ岳の方面に千丈沢乗越が見えたためトラバースすることにした。ハイマツが雪面に出ていたため雪崩の危険性は少ないと判断し、ロープは出さずに稜上まで進んだ。例年であれば雪が多くアンザイレンする可能性もあったので、本年度は雪が少ないようであった。千丈沢乗越から先は夏道が出ているようであった。千丈沢乗越にアタック用の装備をデポし休憩した。休憩後、フラッグを刺し、テープを巻きながらトレースを辿って下って行った。Fixを通過し、2320m付近デポ地でワカンに履き替え、C3へと帰幕した。

 

1月1日 雪

 C3(6:35)~奥丸山(8:30)~AC(10:30)

朝から雪がしんしんと降る中、ワカン・ハーネスを着け出発する。前日のトレースは基本的に残っているが、埋まっている箇所も数か所あり、交代でラッセルしながら進んでいく。重荷のため、奥丸山への登りではアッセンダーを使い順調に進んでいく。2320m付近デポ地でデポを回収し、予定していた2350m付近まで少し登って、翌日からの悪天予報に備え時間をかけてしっかりと整地・幕営行った。この日は岩附OBから頂いた焼きそばを食べ、アタックに向けラジウスパーティーをして英気を養った。夜には風雪が強まり、22時ごろ食当以外の3名でテントラッセルをした。

 

1月2日 雪のち晴 停滞

 昨晩から止むことなしに降雪は続いていた。アタックを予定していたため2時に起床したが、降雪は止む気配がなく、稜線には強く風が吹きつける音がしていた。前日の天気図やラジオの情報、部員の体調も考慮し、停滞を決定した。しかし10時ごろから晴れ始め、風も弱まっていた。午後は時折雲がかかっていたが大きく崩れることはなかった。

 

1月3日 雲

 AC(4:10)~Fix終了点(6:50)~槍ヶ岳山荘(7:50)~槍ヶ岳(8:40)~AC(11:40)

 午後には冬型が強まることを懸念し、午前中には行動を終わらせるべきだと判断したため出発時間を早めた。昨日の降雪でトレースは期待できなかったため、始めはワカンを装着し出発する。ラテルネで先の道を照らし、水鉛谷側に発達する雪庇に気を付けながら、テープと旗を頼りに進んでいく。2400m付近ナイフリッジのFix通過後にワカンからアイゼンへ付け替えた。その先も旗を頼りに進んでいく。千丈沢乗越への3連続Fixでは上級生が下級生の下に付いた。Fix終了点に着くころには夜が明け始め、空は雲がかかっていたが時折槍ヶ岳も姿を見せた。千丈沢乗越到着後、デポしたザイルや登攀具を回収した。西鎌尾根は、初め夏道が出ていたが、大岩を巻く際はトレースも消えており、膝上ほどのラッセルに苦しめられた。またホワイトアウト気味になっており、夏道も非常に分かりにくくなっていた。そのため大岩を巻いたのち再び稜上に戻り、忠実に尾根沿いを進んだ。標高が上がるにつれて雪も硬くなり、暴風となっていたため、しっかりと蹴り込みながら進んでいく。顔面凍傷に気を付けながら、気合で登っていくと、槍ヶ岳山荘が見えた。山荘の風の当たらない場所で休憩をし、凍傷がないかを確認した。槍ヶ岳への登りは、最初は登りルートを行ったが確保のとれる鎖が無いため危険だと判断し、下りルートから登ることにした。鎖にはPASを付けながら登った。最後のハシゴはザイルを出す予定であったが、しっかりとハシゴが出ていたため張らずに進んだ。しかし、風も強く危険であるため下りでは張ることにした。山頂では強風のため速やかに記念写真を撮り、すぐに降りることにした。下りでは福島のリードでハシゴに50mのFixを張った。支点はハシゴの基部で取った。その後も鎖にPASを付けながら下る。再び槍ヶ岳山荘で休憩を取った後、ACへ向けて出発する。千丈沢乗越への下りも、滑落しないように慎重に歩く。千丈沢乗越からはFixを回収しながら進んだ。2400mのFix回収後に太陽が出てきたためサングラス付け、アイゼンからワカンに変えた。標高を下げると風もかなり弱まっていた。トレースをたどってACへ帰幕した。AC到着後はアタック成功を祝して砂糖を大量に入れた紅茶とココアを作ったが、あれはあまりにも甘すぎた。

 

1月4日 雪

 AC(6:20)〜奥丸山(8:10)〜C3(10:10)〜C2(13:30)〜C1(17:30)~新穂高温泉(17:50)

 テントを撤収し、体操を済ませて出発した。ACからうっすら残るトレースとテープ、尾根を目印に進んで行く。トレースはまばらに残っていて、トレースのないところではザックを置いてのラッセルなどで進んだ。奥丸山を登りきり頂上でで休憩をとった。休憩後、奥丸山から下り、Fix地点へと着きPASで確保を取って下った。北西の切れ落ちた崖、方角、テープを見ながら慎重に下っていきC3へと到着した。デポを回収しC3で休憩した後、樹林帯の中ラッセルしていった。C2までもトレースやテープなどを頼りに進んだ。C2へ着いた時点での隊員の体調や時間を鑑み新穂高温泉まで下山することとした。中崎の鼻まで順調に進み、テープを頼りに中崎の鼻を下る。下りではトレースはあまり残っておらず、テープを頼りに進んでいった。途中で暗くなってきたため、ラテルネをつけ、再び進んで行く。樹林帯を進み、遠くの方に光が見えた頃、樹林帯を抜けて舗装道に出た。舗装道からはバス最終時刻に間に合うように走り、C1でデポを回収した後急いでバス停に向かった。無事バス停に到着し、写真を撮って冬山合宿を終了した。


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東京農業大学 常盤松会館本館3F 農友会山岳部